昨日の NHK の番組(日本の農業について)を見た。あれを見てから未だに動揺を抑えきれず、心臓の動悸が時折、ではないな、正直なところ、一日中高まり続けているのを感じている。番組は"地域発"を銘打っていたので、視聴者は都市圏に住む層を主体にしていたと思う。だが、残念、私は稲作生産農家なのであった。
なんというか、こういう事はあまり書かない方が良いのかもしれないのだが(ネットに書くことで後々言質を取られかねない)、あの番組は、比較的中立だったと言っておきましょう。あと、1俵は60kgですよという事も番組で補足しておけば、良かったのではないかと思います。
消費者の方は、あの番組を見てどう思われたのだろうか。正直なところ、私はネット以外での情報が欲しいと思った。ネットで得られる情報は、ネットで発信している世代、つまり今の 30 歳代前後より下の世代であり、ネット以外の声をすくいあげるには、地元の近所を・・・となるのだが、近所も農家ばかりなので・・・。
さて、
あの番組は「消費者のために米の消費や日本の農政は危機に陥っています」という事を伝えたかったように思える。だが、一農家の立場からすると、あれは見せしめのための恐怖広報だと思う。悲観的な事(海外からの米輸入解禁)や棚田の事、大規模化が一筋縄にはいかない事などをあげて、農家にとっては恐怖感を煽ることになったのではないだろうか。
しかし、視聴者の中には農家も含まれている。たぶん、たぶんだが、あの番組を見た多くの農家は「あぁ、うちの近所で起こっている事は日本中で起こっているんだ」と萎縮したのではないかと思う。例えれば、大規模化については・・・(読み直し時、校閲削除)。
それよりも、こうしたほうが日本の農業は良くなりますよ、もっと明るい方向性がありますよ、という理想的な面、勿論、現実的な路線を踏まえての提示があればよかったとは思う。しかし、番組の方向付けが消費者に絞られていそうな所だったので、こういう路線は無しか。NHK は取材に結構な時間を費やしたようだが、こういった金曜日平日7時30分という時間ではなく、もうちょっと、せめて休日に放送をして欲しかったと思う。いつだったか何かの番組のように、2部構成で7時30分~11時という枠で取り上げてもらえれば良かったのではないかと。1部は消費者向け、2部は生産農家向け。それぞれが、違った立場で見ることができただろうし、それこそ視聴者参加型の番組でアンケートを採りながら番組進行を行えばよかったのではないかと思う。生放送だったんだから・・・。そういう意味でちょっと物足りないというか勿体なかったと思う。
もう1点、農家同士が対立しているという構図が取り上げられていたが、なんとなく違和感を感じた。あのまま番組の内容を素直に受け止めると「我の強い一農家」vs「自ら営農を志す農家達(営農組合)」という構図に見えてしまわないだろうか。他にも野菜の流通の件でも感じたのだが、違和感の正体はJA(農協)が一切介在していないように見えた事。これは、これは、どう考えて良いのでしょう。何となく営農組合というのはJA(農協)の意向が入っているようにも思えなくもなかったのは、番組の中でJA(農協)は一切取り上げられていなかった事。だから逆に変に勘ぐってしまう。本当に何も無いのかもしれないけど、でも、実際、現場ではJA(農協)の動向無くして農政は成り立たなかったわけで、そういう意味で、今回政府が方針転換(今年度に入ってから急にですね、ポジティブリスト導入や、有機農産物を推進する法律が通ったり、あとは大規模化を進めるのもあまりにも性急すぎで)するにあたり、JA(農協)は何かしたのか。いや、それとも何もしなかったのか。いや、なにかJA(農協)を責め立てようという訳ではないのです。
ただ、なんとなく・・・と書いていると、際限が無いし、これにて書き辞める事にする。
とりあえず、番組にはもう1つ、アメリカやオーストラリアといった大規模農業と日本と同じように比較するのではなく、日本と比較的に経営体型が近い欧州の事例も取り上げて欲しかった、というのが正直な所。興味があれば、どうぞ、ご自身でネットから情報をお集め下さい。稲作だけが農業ではありません(たとえば、花も農業です)し、関税率も日本がとりたてて高い訳でもありません。貴方がもし情報を集めたいとして、それはネットで得られましたか?その情報は信頼に足るものですか?信頼とは、何でしょう。なにか感想をお持ちになられましたか?では、その声を是非ネットに上げてください。どうか、お願いします。
農業に携わる身として、以上、一現場から感想と意見。