かつて仰いだあの宇宙(そら)は、
今もまほろば穏やかに。
ふたつのスピカ、最新巻(14)を読んだ。もうそろそろ作品が終わりのための物語になりつつあるのは、いささか哀しい。今時の言葉で言えば「死亡フラグ立ちすぎ」。作品全体は、心穏やかになる良い雰囲気なんだけれども、主人公レベルの登場人物が去ってゆくのは、正直いたたまれない。
今回も、ストーリーには謎かけもなければ、激しさもなく、かといって退屈でもない。ただただ、おだやかな幕引きにむかっての方向性が定まってきたな、そんな感想をだれもがもつであろう最新刊であった。ファンなら買いではあるが、正直、この展開は人を選ぶと思う。おそらく賛否両論あるだろうが、私は、じき訪れるであろう終わりを、静かに見守りたい。
柳沼 行(やぎぬま こう) が描くコミック「ふたつのスピカ」(Wikipedia) 。近い未来の日本を舞台に、宇宙を目指す少年少女たちのものがたり。この作品は、発表当初から私は作品の舞台設定が気になっていた。主役は子供たちではない。一見、作品はジュブナイルを装いつつも、宇宙開発に携わり、そして破れた大人達こそが隠れた主役なのだ。彼らの、台詞もない、何気ない一コマこそが、流涕を誘う。私が人生にふて腐れながら社会人になった8年前から連載していることもあり、深く思い入れのある作品である。
このコミックを読んでいると、今でもアニメ版エンディング主題歌、坂本九が歌う「 見上げてごらん夜の星を 」が聞こえてくるようだ。何故か懐かしさがこみ上げる。私が子供の頃見上げた夜空は、今も何も変わらないはずだけど、忘れかけていた純粋な気持ちを思い起こさせてくれる。ふたつのスピカを読むたびに、きっとこの唄を思い浮かべるのだろう。決して郷愁といった湿った感情ではなく、無邪気な力強さとして、明日への糧として。