◆ヱヴァンゲリオン新劇場版・破は面白い。
「面白い!」 冒頭から登場する新キャラと、これまでに見たことのない戦闘シーンに、正直そう思った。本当に、心の底から面白いと思った。良い仕事をしている。おそらく、この作品についての評価は、4部作すべてが終わったときに下されるだろうが、作り手がやりたかった事と、観に来た観客が望んだ事が一致するまれな作品になるのではないだろうか、そう思う。
自分としては、最後まで観て清々しかった。観て良かった。
◆SF (Science Fiction)に求められる「未来都市描画」を満たしていいる
この作品は、SF である。普段アニメばかり観ていると、当たり前すぎて忘れてしまいそうだが、このアニメはサイエンス・フィクションの作品のソレである。今回も序に引き続き、「都市機能」としての未来の姿を強く印象づけてくれたと思う。
一番多くの人が「おや?」と思ったのは、伊吹マヤがあくびしながら Nelv 本部に出勤するシーンであろう。あの瞬間、これまでのヱヴァとは異なる音楽使いとなり、描写は未来の都市機能を映し出すシーンが投影される。第三新東京市という、盆地という地理的条件では、朝はどうしても遅くなってしまうので、地上を光で投影する必要があったのだろう。その、光を投影する、巨大なミラーの描写が象徴的だ。
私は富山に住んでいたため、高い立山連峰の影響で、日の出時間がいつも遅いのが気になっていた。冬だと、7時ぐらいまで真っ暗。しかも、太陽が山を越えて顔を出すのは7時30ぐらい。それが、普通ではないと知ったのは、私自身が上京してからだ。富山の日の出は遅すぎる!
ということもあり、劇中の第三新東京市という、まがいなりにも日本の首都である場所が、世間の時間感覚と違ってはどうよ?という所もあり、あぁいった巨大ミラーが出てくるのだろうと思う。
そのほかは、モノレールの軌道が変更になったり、路線の踏切を渡る雑踏など……それらは、限りなく現実に近い未来。ほんの5年後の未来である、劇中の 2014 年を上手く描写しているように思った。
限りなく、現実の想像に近い5年後という未来の都市機構とは裏腹に、主人公たちの通う中学校の描写は、現在のソレ(いや、20年前ぐらいから続くそれか)と変わらない、きわめて現在の日常に近い近未来である。
そういう意味で劇中の都市描写を眺めると、5年後の人たちは、それほど今とは人の中身は変わらないけど、確実に確実技術は進歩しているように感じられた。リアリティの高さというのは、今の技術の延長線上にあるからなのだろうか。おそらく、風雨にさらされるの歩道のエスカレータ化は、メンテナンス面から実現が難しそうに思われる。
しかし、必ずしもそれら技術は不可能ではないし、3D投影技術(今は拡張現実と呼ばれている技術)ですら、いずれ、当たり前のようになるのだろう。そういった意味で、未来に対して、現実をみつつも肯定的にとらえた作品のように思える。正直、私はワクワクしたし、こういった未来の可能性を観ることができ、思いを馳せることが出来ただけでも、観て良かったと思っている。
◆3D強化による娯楽性の追求と、メッセージ性の強い脚本との共存。
3D 技術の進化が目覚ましい。娯楽性の高さがこれほどまでに高いのは、3D 技術の発展にあるのではないかと思う。一見古そうに見えるセルっぽさを装いながら、至る所に 3D CGI を使う描写、正直はビックリさせられた。これがアニメの可能性なのか!
正直、私は3Dはうさんくさいとしか思っていなかった。いかにも安っぽいというか、どこにでもありそうな描画が多すぎた! しかし、もうそれは過去の話である。
スタジオカラーほか、製作スタッフ(オレンジ?三次元?GONZO?)の作る世界というのは、他社のソレとは違う。透明な空気感を感じることが出来る、すばらしい描写になていると思う。おそらく、まったく普段アニメを見ない人が見ても、なんら「現実世界」に対する、この基本的に 2D で描写されるアニメ、その世界に対して違和感を感じることが出来ないくらいではないだろうか。
ここ10年ぐらいアニメを観ていない人は、
大変失礼だとは思うのだが、
かつてのセルアニメと
3D CGI をフル活用したアニメ、
この新しいアニメと、見比べることができるであろうか。
おそらくできまい。
3D CGI は純粋に技術として確立し、
劇場に訪れる観客は、その 3D CGI は紡ぎ出すストーリー、
物語の本質に、魅了されるはずである。
10年前、同じ事をセルで行おうとしたら、大変な労力と時間が必要になったはずである。だが、彼らスタッフは、3D技術を使い、同じ時間と労力を使いながら、2Dのセルという制約に縛られず、非常に良い作品を作ったと思う。
まぁ、とりあえず見てみたらどうかな? アニメだから、と敬遠せずにね。
◆唄は良いね。
「翼をください」。自分としては思い出すのはコレだな。
ただ、こう書くと叩かれそうなんだが、
庵野監督の世代のコノの唄って、ベトナム戦争の反戦歌だよね?
そういう意味で考えると、
戦争したくなくても、時代が、周りが、状況が、
自分自身が戦わなければ、自分自身が死んでいたという、
まさにその、
当時の空気を今に反映しようとしている試みとして、
非常に興味深い。
そのほか、音楽としては「彼氏彼女の事情」との連携性が指摘できるのではないか。多くの人に印象深いのは、レイとゲンドウとの食事シーンではないんだろうか。あのシーンの曲は彼氏彼女の事情のサントラ完全版にも収録されている「ソル:モーツァルトの主題による変奏曲」なのだ。これは、公式の CD 情報でも確認出来た。また、そのほかにも、明るい雰囲気の曲では、彼氏彼女の事情のシーンが多く使われていたと思う。
たとえば、浄水プラント(正式名称不明、赤い海水を、現在のような青い海水のようにする巨大水族館のような施設)を訪問する際に流れている曲は、彼氏彼女の事情で使われていた「天下泰平」(彼氏彼女の事情 Act 1.0 トラック9 に収録)であろうし、式波アスカからみは、この曲のバリエーションが多かったように思う。
製作に拘るスタッフのことだ、曲にも何らかの意味・意図を載せているに違いないだろう。そう確信したのは、劇場版パンフレット、インタビュー2ページ目に「地獄の黙示録」についての記載があったからである。やはり、このヱヴァという作品は、「戦後」から改めて当時を見つめ直したフィルムなのである、そう思わされるた。そういう意味で、邪推(Niftyとか当時の草の根の奴しか知らん言葉かもしれんが)してみると楽しいものがある。
◆自分に、思いを重ねて。
以下自分語り。うわ(;^ω^)ツマンネ
--
丁度、新劇場版一作目(序)を見たのが、2年前。
公開初日かつ観に行ったのが、上京当日の夜だったので、とても印象的でした。
第三新東京市に来させられたシンジの心境というか、心のせめぎ合いが、
自分自身の、好き好んで上京した訳じゃなかった、その気持ちと重なることもあり、
なおさら強く印象づけられたように思います。
それから、ほぼ2年。
破を見て、またまた思うところも多々。やっぱり見て良かった。
好きだから、ここ(東京)に来た。来て良かったでしょ?
そう、自分に言ってあげたい。
前回の「序」では、今にもくじけそうな自分の心意気を、
アニメの登場人物ですら頑張っているのに・・・と、逆の意味で良い刺激を受け、
ひたすら、ひたすら、日々走り続けることができたのだと、いまでは確信しています。
そして、今回の「破」では、いつの間にか、難なくエヴァを操縦することができているシンジに、
自分を、その…今でこそ、難なく仕事を、日々の業務としてこなしている自分に投影しながら、
5年前の自分にも、重ねて投影することをしながら・・・、
つらい日々を送った、
自分に重ねながら…そうやって、観ているからこそ、かもしれませんが、
この作品を観ることが出来てよかった。
リアルタイムで劇場で観ることが出来て良かった。
自分で、まだまだ出来ることはある。
自分で、自分自身が、まだまだ、出来ることがいっぱいある。
たかが映画かもしれないけれど、色々な思いを巡らせることが出来る。
そんな、作品です。
個人的に思い入れの深い作品になりそうです。
◆以下、近況を交え。映画とは関係がないけど、月明かりがまぶしかったので。
富山に住んでいた頃、
普段は真っ暗な田んぼの中の風景も、
ちょっとした月明かりで
その表情を変えていた。
どうしても、外に出たくなって、
家から外をちょっとだけ散歩。
そしたら、随分と強い月明かりが。
これだけの月あかり。
もしも、ここが富山であれば、
あたり一面に青白いライトが灯されたように空気は透き通り、
大地にはぐくまれた、稲の力強い緑と混ぜ合わり、
淡い、青白い光の空間が、その向こうに見える
標高3,000mの立山連邦めがけて駆けてゆく。
そんな、不思議な空間が、
かつては一面に広がっていたのを思い出す。
かつて、の話。
今は、近隣の市街地化の影響により、
実家ですら天の川を見るのは困難である。
あの時見た、綺麗な夜空は、
もうこの世には存在しないのだ。
手をのばせば
すぐに届くかのような夜空は、
あのとき、僕が思いを馳せた夜空は、
もう、この地球上のどこにも存在しない。
すべては心の向こうに。今はそれでいい。
プラネテスの再放送が今晩(7/5) 23:54 から BS-2 で始まります。
http://www3.nhk.or.jp/anime/planetes/
宇宙に憧れたことがあれば、一度見るべき。
特に、これは、挫折した大人のためのアニメじゃないかな。
先日も DVD を見返してる途中だったのだけど、これはいい。見るべき。
ストーリーもグッとくる。原作とはちがうオリジナリティが作品に深みを持たせている。
声優陣もアニメの技術的・演出的にも素晴らしい。
ふたつのスピカとセットで見ることをオススメします。
ついでに、ストラトス・フォーも AT-X で今週から放映がはじまるので、見るべし。
どれも、前向きに、元気になれる、とても良いアニメです。
国立の漫画喫茶云々宣う連中は、
まず、こういった作品を見てからモノ申せと、つよく思います!!1
(脱線しすぎ、意味不明)