行ってきました。クラウドコンピューティング(笑)という雰囲気も一部あるなか、皆さんいかがお過ごしですか? 以下、会場でメモった内容を簡単にまとめておきました(もし間違っている場所がありましたら、申し訳ありません、ご指摘ください)。
開催日時:2009年4月10日(金) 10:30~17:30
場所:ウェスティンホテル東京(東京都恵比寿)B2ギャラクシールーム
主催:日経コンピュータ、ITpro
◆開場前の雰囲気
場所はウェスティンホテル東京。JR恵比寿駅の東口を出て、ガーデンウォークなる動く歩道に乗りながら、恵比寿ガーデンプレイスまで移動。駅からは一番奥の方に会場となるウェスティンホテル東京があった。中に入って、右側に入り、エスカレータで地下二階の会場に向かう。
会場へは早めに行き、前の方の良い席を取ろうと思っていた。時刻は9:45分。受付の方に話しかけると「まだ会場前ですので…」ということで10時まで待つ。その間、あたりを見渡すと、だいたい15人ぐらい。
行く前は、「クラウド開発者/利用者のための」と銘打っていたので、会場には Linux の開発者のような雰囲気なのかな?と思っていた。それでも、大半はお堅い感じのスーツ姿だろうなと。実際は、もうこの時点でほとんどの人がスーツ姿。会社から(業務として)来てる人たちなのかな?と思った。
10:00 となり、開場となったわけだけど。早く並んだのに一番前の席に座れなかったのは残念。受付で並んだ場所によって、前の方とか、左奥のほうに座らされた。ちょっと納得いかない。整理券を配るなりしてくれてもよかったのに。せっかく早く行ったのになぁ・・・それでも前から4列目だったから、よかったと考えるべきか。・・などとぼやいていても仕方がない。
開場を見渡すと、いわゆるセミナーっぽく、長机に1ブロック6人が座るような感じだった。会場全体はそこそこ広い。アナウンスは満席と言っていたので、300人近くが集まったようだ。
10:20 には、開場の殆ど全てが埋まっていた。ちょっと後ろの方を見渡してみると、スーツ姿が思ったよりも多いなと思った。あとは女性が少ない。雰囲気としては、この時点で開発者というよりも、随分とビジネス的なセミナーだなぁという印象を受けた。
◆そして開場
10:30 に女性の司会をされている方が開会をアナウンス。
セミナーに先駆け ITpro 副編集長 吉田琢也氏の挨拶。
- ITpro カンファレンスを今年1月から初めて、今回で4回目。
- 一年前はクラウドをテーマにイベントを行おうとしてもできなかった。
- SaaS と呼ばれていたものが、エンタープライズの「クラウド」に。
- ITpro のウェブの一部も Amazon EC2 を使っている → 記事レコメンドのこと。「ITproレコメンド」開発記 を参照
◆基調講演『 OS in The Sky クラウド時代のインフラストラクチャとなった Amazon Web Service 』
講師:Jeff Barry氏( Amazon Web Services Senior Manager, Clound Computing Solutions )
- 講演に先立ち、新しいサービスやアイディアの役に立てば&お互いディスカッションしましょう。
- 氏の略歴。Microsoftからアマゾンに移った。Xen ベースのウェブサービスを考えることになり、以来、AWS (Amazon Web Services) の展開に携わる。「未来のウェブサービスをアマゾンで作っていきたい。」
- クラウドの定義。
-- リソースへのアクセスが基盤の新モデル。
-- 古いモデルは、サーバを立てようと思ったら、まずデータセンターに」電話して、設置したり、面倒なやりとりが。今のモデル(AWS)は infrastracture (サーバ・ストレージ・ネットワーク帯域)がすぐにつかえる。
-- ビジネスの規模に応じて対応出来る。一般的にサービス開始前に想定するのは大変。クラウドであればサービス開始前に帯域やリソースを見積もる必要は無い。アクセスがなければ、お金もかからない。
-- ディザスタリカバリを例にとって、以前は複雑で面倒でお金もかかった。クラウドであれば、コストも高くない。
- Amazon Web Services (AWS) は4つのサービス
-- EC2 (Elastic Compute Cloud) サーバを必要なときに時間貸し。
-- S3 (Simple Storage Service) データストレージ。High Availablity を備えている。
-- SQS (Simple Queue Service)
-- CloundFront (CDN, Contende Delivery Service) 世界中からリクエストをさばく。もちろん東京も。
--- AWS をベースにした 40社ぐらいの developer がいる
- 導入事例1 ニューヨークタイムズ紙
-- 膨大な TIFF 形式の画像データを軽くダウンロードしやすい PDF にしようとしていた。
-- 4TB のデータを S3 上に展開、100ノードを使って処理。1100万 PDF ファイルを作成。
- 導入事例2 animoto サービス http://animoto.com/
-- 新興企業 animoto (アニモート)。昨年からサービスを開始。
-- 独自の画像解析アルゴリズム。画像データからプロモーションビデオを自動生成。
-- 60 サーバでスタートした。友達が友達を呼び、すぐに広がった。
-- ピーク時 3,500 サーバまで利用している。一般的に新興企業(startup company)では、サーバを用意できないだろう。クラウドなら、すぐに準備できる。
-- Jeff 氏が作成したクリップ Jeff and Carmen in Hawaii のデモを再生しながら、クリエイティブじゃない自分でも作成できた。すごいよねと。
- 導入事例3 ワシントンポスト紙
-- ヒラリー・クリントン氏の活動内容が 17,000 件の PDF ファイルに。
-- 中身を纏めるのに EC2 を使った。
-- 2,000 ノードを9時間使って解析。
-- 補足:このあたりの経緯は 日経BPnetの記事が簡潔でわかりやすい。ニュース・解説[1]クラウド・コンピューティング
- 導入事例4 Autodesk
-- オンラインでホームデザイン。
-- スケーラブルな(拡張可能な?)データベースがほしかった。
- 導入事例5 Smugmug(スマグマグ) http://www.smugmug.com/
-- 画像共有サービス。AWS を全面的に活用。
-- 1ペタバイト(10^15)のデータ容量をS3上で運用している。
- Amazon のサービス内容について。
-- 今日では大きく分けて3つ。もう昔の単なるオンライン書店ではない。
-- 1. amazon.com (オンライン書店)
-- 2. marketplace (流通という意味で?)
-- 3. AWS - Amazon Web Services → クラウドで成長中
- AWS をどのように使うのか。写真のアップロードを考える。
-- デジカメから、パソコン(local storage)にデータをおくる。それから S3 上にデータを送ればいい。
-- 意識なくてもデータは冗長化されるから、改めて複製(バックアップ)をとる必要性はない。
-- しかも、ネットで簡単に共有できる。
-- 操作は S3 Firefox Organizer(S3Fox) を使えば楽。Firefox plug-in の該当ページ
-- 画面でデモ。Jeff 氏の荒れた部屋の画像。。奥さんに叱られ、簡単に写真を非公開にもできる。
-- Jeff氏自身は $7/月の支払い。
- AWS の Regions と Availability Zone の考え方
-- Regions はアメリカとヨーロッパの2つ。将来的にはアジアも。
-- Availability Zone は、アメリカでは東部と西部に分かれている。
--- 独立電源、独立したネットワーク、セキュリティ
- 最近の AWS
-- EC2 Block Storage = EBS 、テラバイト級のデータを扱えるようになった。
-- Elastic MapReduce
- EC2 の実演
以下、質疑応答
Q. セキュリティで力を入れているところは?
→セキュリティについてはよく聞かれる。ホワイトペーパーを読んでほしい。
Security Whitepaper (PDF) [aws.amazon.com]
Q.互換性やデータ・ポータビリティに関する Amazon のポリシーを教えてください。
→EC2 はインフラストラクチャ。その上で動いている OS やアプリケーションは、何ら制約がない。何らかの標準を目指そうと言うこともない。
Q.Google App Engine のようなアプリケーションの実行環境を提供する Platform as a Service を提供する予定はあるか。
→今はインフラレベルでの提供。Platform としては、まだ行わない。
Q.AWS のデータセンターを日本に建設する予定はありますか?
→アジア地域には建設をする。(シンガポールかもしれないし、東京かもしれないし)。
Q.Eucalyptus のようなオープンソースのクラウド環境を実現するソフトがあるが?
→Amazon は巨大なデータセンターや運用技術・ノウハウを持っている。我々はサービスに対して自信を持っている。オープンソースでのそれらは単なる模造品(imitation)にすぎない。脅威ではない。
そのほかの質疑応答
- EBS のハードウェアあどのような製品か。EMC や NetApp なのか? →製品を仕入れているようだが、技術部分は独自設計。
- 複数の EC2 インスタンスを同一マシンに展開できますか?そのほうがマシン間の通信が高速化すると思います。
- 2週間サポートから返信がなかったという人
- Windows Server 2008 のサポートはいつからですか?
- Windows Server での運用について。ライセンスは amazon.com とマイクロソフトが独自交渉
- 障害が発生したらどうするのか? AWS の Health Check はブラウザでチェックできるようにしている。今は大丈夫でしょう。と画面を見せながら。
以上、基調講演の様子については、5月末を目処にサイトに公開する予定とアナウンスがありました。でも、もう概要記事はアップされてるのね、はやいなぁ(・∀・)
- 「クラウドはビジネスの本質に注力するための新たな手段」米アマゾンのエバンジェリストが強調
そのほかのセッションは以下の通りでした。各セッション詳細はITpro にまとめ記事があがっていたので、特に書きません。
◆セッション1『 チュートリアル・Amazon Web Services 』
午後からのセッションでは、まず日経の記者さんによるクラウドサービス・Amazon EC2(AWS) のまとめ。
・「どの辺りがクラウド」なのか 中田 敦氏(日経コンピュータ編集)
・「10分でわかる AWS」 高橋 秀和氏(ITpro編集)
◆セッション2『 Oracle on Amazon EC2/S3 』
講師:西脇 資哲氏(日本オラクル株式会社 システム事業統括本部 シニアディレクター)
- 「AWSで1時間以内にOracle環境をクラウド上に構築できる」と日本オラクル
◆セッション3『 Amazon EC2 を使った実践 SaaS 活用事例 』
講師:並河 祐貴氏(TIS 株式会社 SonicGarden)
- 「EC2の魅力はすぐにサービス開始できること」---TISの並河氏
- 「Amazon EC2を使った実践SaaS運用事例」の資料を公開します+参加記録 (ITproテクノロジ・カンファレンス) http://d.hatena.ne.jp/rx7/20090412/p2 で SKIPaaS を使った事例が紹介されています。
◆セッション4『 パッケージ・ベンダーから見たインフラストラクチャ・サービスの活用法 』
講師:太田 一樹氏(株式会社プリファードインフラストラクチャー 最高技術責任者)
- EC2は早くて安いがHA機能が足りない---プリファードCTO
◆セッション5『 クラウド時代のデータベース技術 』
講師:井上 武氏(日本電信電話株式会社 NTT未来ねっと研究所 研究主任)
- クラウド時代のDB技術はこうして作られた--- NTT未来ねっと研の井上氏
◆感想
全体的に、言って良かった。お金の元は取れるような刺激的な内容だったと思う。普段、このようなイベントは現場技術者が多いのかな?と思っていたのだが、随分とスーツ姿が目立っていてビジネス色が強い気がした。むしろ、運用技術者ではなく、研究開発者といった方が目立ったのだろうか。サービスレベルの保証やスペックに関する質問が多かったことから、そのように思った。
あとは、Jeff 氏は気さくな感じがして好感をうけた。これまで、AWS はクラウド(笑)の急先鋒のような気がして、自分はまじめに取り組んでいなかったけど、遅ればせながら勉強をすすめていこうと思う。日本ではクラウドの言葉だけが先行してしまった感があるが、技術的には色々おもしろい。また、オープンソースでクラウドができると詠う Eucalyptus に対しては、同じようなサービスができるようならやってみろ、といった意気込みを感じた。ネタにマジレス?という感じがしないでもない。中田記者も Jeff 氏の口調にびっくりしていたようだった。Jeff氏も意外と脅威に感じているからサラッと受け流せなかったのかもしれない。
さて、このような機会を設けてくださった ITpro 関係者のみなさん、ありがとうございました。
◆おまけ、黄昏時の恵比寿ガーデンプレイス
ITpro テクノロジ・カンファレンスの帰り際に撮影。