◆クラウドという世界
先日の書き込みへ R。さんからコメントをいただきました。ちょっと返信が長くなったのと、最近、自分が漠然としていた思いが文章になりそうだったので、以下、簡単にまとめておきます。
正直、僕はクラウドなんて 「クラウド(笑)」 って思ってたんですよ。けれど、色々周辺技術を調べたり、実際の運用事例を見るにつれ、考えが色々変わってきました。今ではもう「これは世の中をかえるんじゃないか?」とまで思い込むほどになっています。
クラウドと言うと、なんだか漠然としたイメージかもしれませんが、実体を様々な仮想化やグリッドコンピューティングと呼ばれる技術の総称と捉えると、わかりやすくなります。自分としては、おそらく仮想化技術というものが、「仮想化」なり「クラウド」といったバズワード(Web 2.0 のように、よく実体がわからないような意味で)としてではなく、より、私たちの生活の中の身近な技術になっていくのでは、そういう風に感じています。
どのように身近になるかといえば、今一番近いイメージが Amazon EC2 をはじめとする AWS ( Amazon Web Services ) でしょう。Amazon EC2 を使って構築出来るサーバ環境のように、いつでも、好きなときに、好きなだけリソースを切り貼りできる環境というのは魅力的だと思います(魅力的というのは、いささか私のようにサーバ管理を経験したことがある方だけなのかもしれませんが・・・)。
一昔前であれば(今も専用環境はそうですが)、ちょっとスペックが足りなくなれば、メモリを追加するなり、CPUを差し替えるといったハードウェア的な手間暇をかける必要がありました。ある程度、ハードウェアに関する専門的な知識も求められましたし、なによりお金と時間(納期)もかかるものだったのです。
でも今は、ちょっと設定を変更するだけで、パパッとサーバの能力を引き上げることができます。必要な時に、必要なだけ。部屋から一歩も外出しなくとも、誰とでも会話しなくとも。たとえ、それが真夜中や早朝だったとしても。
ハードウェア的な事を意識しなくなれば、業界で働く人に求められるスキルもかわってくるのではないでしょうか。ネットワーク管理者に求められるものも、今後は違ったものになるかもしれません。
今は、まだネットワーク機器やハードウェアの知識も必要とされるネットワーク界隈です。しかし、クラウドなり仮想化といった形でハードウェア技術がボックス化されれば、人間はより上位の(?)ネットワークの運用だけに集中することができるでしょう。また、ネットワークの知識がさほどなくとも、自由にサーバのリソースを使いこなせるようになるかもしれません。逆に、高度に専門化された知識ではなく、どのように上手く運用することが出来るか、そのあたり機械で判断できないところを人間が特化するようになるのかな、などと漠然と考えています。
それは、あたかも携帯電話の原理や電波の知識がなくとも、ボタンを押すだけで、いつでも、どこでもケータイで通話できるような世界。いま、まさにそういった時代が訪れようとしているのかな?と僕は非常にわくわくしています。
◆かつてはインターネット(笑)でした。
今から14年前。インターネットが出始めた頃、僕は今のクラウドに対してと同じような印象を抱いていました。当時、自分はパソコン通信の世界にどっぷり浸かっており、インターネットだ何だか知らないけど、パソコン通信が無くなるはずがない!と強く思い込んでいたものです。
主な根拠としては(根拠と呼べるほど裏打ちされたものではありませんが)、
「インターネットの接続料金が高い。ネットが有料だなんてありえない」 … パソコン通信は電話料金しか必要としない。なのに、インターネットはプロバイダに接続するための料金が必要。Nifty-Server のような大手商用ネットを僕は嫌ってましたから、高かったので。だって、電話料金とは別に、1分間10円ですよ。2,400bpsの時代なのに。。
あとは、文化的なところでも、大手商用ネットやインターネットに比べ、草の根BBSのほうが「自由を感じることができる風土であった」と思います。パソコン通信の管理者である Sys-Op (シスオペ) が社会的秩序を求める所もあれば、一方で自由闊達な世界もあり、様々なネットワークが草の根BBSでは多様化される社会のなかで混在していました。
ま、もっとも致命的だったのは「接続速度が遅い。画面が重い」でしょうか。インターネットは WWW (Wolrd Wide Web のソレ)だけではないものの、様々な情報に的確にアクセスするために WWW は欠かせません。しかし、重い。回線が遅いので Netscape Navigator (ネスケ)に表示されるページも重いし、プロバイダとの接続回線も遅いと全然画面が表示されないし、なにより、、Netscape Navigator を表示するだけでも PC がメモリを喰うので、ディスクは常にガリガリガリガリ…。
なんというか、テキストだらけのパソコン通信に比べて、否定的な面ばかりが目立ったように思います。でもそれは、今から思えば一方的な面しか見ていなくて、視野が狭かった。
否定的な理由を見つけるだけで、満足していて。その先に広がる可能性みたいなものを、全然理解していなかたんです、あの頃の僕は。単に思い込みだけで、今のパソコン通信が一番良いと思っていた。何も調べもせず。・・・今はインターネットに完全に移ってしまっています。
◆新しいフロンティア
で、何が言いたかったというと、思うに、クラウド環境っていうのは全く新しい世界、次のフロンティアなのではないでしょうか。まだ、実体がよく見えないために、いや見ようとしないため?「まるで雲をつかむような話だ」なんて喩えられることも多いのですが、もう、クラウドなる技術は、いま、すでに、このネットワーク上に存在しているのではないでしょうか。単に見ないふり、気がつかないふりをしているだけかもしれません。
僕が、どうしてそういったクラウド(クラウドという言葉が適切かどうかは分かりません。今はクラウドに該当する言葉が見つからないので、あえてクラウドと使わせてください)に惹かれるのかというと、そのような技術が、誰でも使えるようになるからです。Amazon EC2 (AWS) にお金を払ってクラウドを使うのではなく、自分の手許にあるリソースを組み合わせ、自分で自由にクラウド環境を構築することができる。
これって、凄く新しくて、面白いことじゃないでしょうか。今僕が注目しているEucalyptus (ユーカリプタス)は、まさに、そういった環境を自分のものにしよう=いわゆるプライベートクラウド的な使い方をやろうぜ!というソフトなんです。しかも、オープンソースなので利用に関しては一切合切が自由。
自分のハードウェアで、自分のクラウドを作って、そこに自分のデータを置く。eualytpus.com のトップページに書かれたコンセプト "Your Hardware. Your Data. Your Cluod." というのは非常にわかりやすいものだと思います。
Eucalyptus とあわせて、Linux ディストリビューションである Ubuntu にも、僕は改めて惹かれています。特に、その思想的な面です。Ubuntu の bug #1 への対処という考え方、これはクラウド的な世界にも言えるのではないでしょうか。Eucalyputs はオープンソースです。しかも、次期バージョンの Ubuntu 9.10 からは Eucalyputs が正式に組み込まれて提供がはじまります。つまり、Ubuntu linux が動く環境であれば、だれでもやろうと思えばクラウド環境を構築できるようになるんです。
- Introducing the Karmic Koala, our mascot for Ubuntu 9.10
コアラ(Koala = 今年10月にリリースされる Ubuntu 9.10) はユーカリ(Eucalyptus)を食べて成長する。面白いじゃないですか。
せっかくある技術なので、それを使って何か面白いこと、新しい事をやってみたい。そう思って、Japan Eucalyptus Users Group (Jeug) 日本ユーカリプタスユーザズグループを作ります、なんて、勢いで書き込みをしたりしてしまいました。
どうですか?一緒に情報交換しませんか?
ということで、近日中にメーリングリストを立ち上げようと準備をしています。しばしお待ちを。wiki は自由に解放していますので、こちらを編集いただいても結構です。