今週、なんだこうだいって時間があったので、ワイドショーたる茶番劇を眺めていたのだが、今見ていた某番組も呆れてテレビの電源を切った。民放はじめ、NHK ですら安部政権の支持率が当初 70% に近い高支持率が現在、低下した(40%台に落ち込んだ事)と報道していた。だが、40% という支持率は歴史的に見て『高い支持率』のようだ。40% "も" あるのだ。小泉前内閣と比較してみよう。
- ◎時事世論調査に見る小泉内閣の特徴
『発足3年を経ても、なお40%台の支持率を維持しているのは驚異的ではあるが、「貯金」がなければとりたてて突出した印象はなく、今は平均的な高支持率内閣になったとも言える。』
このように小泉政権も高支持率から次第に落ち込んでいったように、かつてのコンピュータ付きブルドーザの異名を持つ田中内閣も支持率当初は"空前の 70% 台の支持率"だったという。だから、現在の阿部内閣の支持率 40% 台は決して悪くはない(ちなみに、お隣の韓国の大統領の支持率は 10% 台、反対は 80% に上る。社会背景・国民性が違うので一概には比較できないが、参考まで)。
ちょっと古い文章をネットで探してみた。この公文俊平氏による指摘はなかなか興味深い。1993 年の衆議院総選挙で自民党が敗退し、日本新党(当時)が政権を獲った。文章では当初熱狂的支持率を得たものの、支持率が高いからといって期待されているかどうかは別の問題だと語っているようだ。
- 「細川内閣の展望」
『朝日新聞社が 9月の5 日から6 日にかけて行った全国世論調査では、内閣支持率は、71% と、過去最高の田中内閣の発足時(1972 年8 月) に記録された62% を大きく上回った。支持の理由としては、「なんとなく政治に変化を期待」をあげる人が、四割近くを占めた。(7) また自民から非自民への政権交代は、77% の人が「よかった」と評価した。このような高い内閣支持率は、その後も衰えをみせていない。読売新聞が9 月の25日から26日にかけて行った全国世論調査では、内閣支持率は71.9% を記録し、10月の23日から24にかけて行った調査では、73.4% とさらに上昇している。
しかし、その半面、新内閣への印象はさほど好いものとはいえず、内閣への期待も必ずしも高くない。』
(別件で興味深いのは 1993 年という現在のように民間でインターネットを手軽に利用できない状況下において情報化社会推進の必要性と情報格差が重要課題であると解いている点。この推察は素晴らしい。)
記憶が確かであれば、当時のマスコミはこぞって細川政権を援護し、まるで日本の改革者であるかのように祭り上げていた。細川政権の支持率は最終的に 30% 台まで落ち込んでいたのに。
- 小泉長期政権への条件は徹底した情報公開 (小池 百合子)
『細川氏の場合、内閣支持率を車のガソリンのようにとらえていました。支持率が連立政権のゴタゴタで少々低下しても、「まだ50%ある」ととらえたうえで、消費税の福祉税化という大テーマをぶつけました。福祉税騒ぎで、さらに支持率が低下しても、「まだ30%もある」と悠々と構えていたものです。まさに支持率は細川政権の生命維持装置でした。ガス欠になる前に自ら車を止め、さっさと去っていったのです。』
仮に『支持率』だけに焦点を絞ってみても、マスコミの対応はどうも『反体制』に偏っているのではないかと思わざるを得ない。とにかく『反対』であればそれでいいのだ。理想も何もない。『体制』を壊すことによって新しい社会が(共産化された社会が)実現できると未だ信じている亡者達がいるように思えなくもない。『支持率』の状況は細川政権と同様の様相なのに、比較すらしない。単に支持率が下がったという『点』のみ取り上げている。細川政権の事は歴史から葬り去らせよう・忘れさせようとしているのではないだろうか。
細川政権は55カ年体制の崩壊という成果は得たものの、結局の所 『口だけ』 であり実行された政策というものは何かしらあったであろうか。
一方、現在の安部政権は着々と方針を実行へ移している。政権発足後、たった6ヶ月の間に多くの事を実行に移している。たとえば、教育基本法改正法成立であり、中国・韓国の公式訪問により北朝鮮包囲網を狭めたり、欧州歴訪による"自由と繁栄の弧"のための各国との協調、インド公式訪問(そういえば TBS は報道特集でタイミングよくインドの所謂格差社会を放送していたな・・・)、APEC参加・ベトナム公式訪問、インドネシア公式訪問、EAP参加・フィリピン公式訪問、しかも、歴代首相が行ってきた"アメリカ詣で"を行わずに(*1)。政治家としての勢いとしては、印象の強かった小泉前政権と比較しても劣らない。防衛省設置法の成立や、直近では朝日新聞によると核テロ防止のため放射線発散処罰法案(仮称)を通常国会に提出するという。過去の政権と比べても引けを取らないと捉える方が客観的であろう。
このあたりの"実績"については政府インターネットTVをご覧頂きたい。もしその存在を知らないのであれば、是非一度見ておくべきだと思う。
- 政府インターネットTV
戦前で言えば大本営発表だが、戦前の裏付けのない偽情報の発信ではない。ウソの報道を政府が行えば、マスコミが総叩きするはずだ。逆に言えば、マスコミが何も言わない(黙殺している)という事は、このネットによる政府報道は事実であるとも考えられないだろうか。
忘れてはいけないのは、民放テレビ局や雑誌・新聞社は広告収入によって経営を成り立たせている。つまり、視聴率や売り上げ部数を稼ぐことが大切なのだ。社会的に大切な事であっても、視聴者が面白おかしくテレビをみてくれるような事、面白可笑しい読み物をエンターテインメントとしてをとりあげなくてはいけない。そこに目を付けたのが政治家達だったようだ(*2)。
まだ私は情報元を正確に辿れないのだが、マスコミを巧く活用したのが、あの空前の支持率 70% 台を獲得した田中内閣時代だったという。
だが、皮肉にも、今は逆に立場は逆転し、政治家達がマスコミに利用される存在になってしまっているのは周知の所ではないだろうか。ネットにつながっている人達であれば、賛否中立含めて様々な情報を入手出来る。一方、ネットにつながっていない人達は情報源としての旧来メディアであるマスコミ(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ・チラシなど)による一方的な情報を受け入れるしかないのだ。ネットを使わなくとも努力すれば反対意見を見つける事は可能ではあるが、情報を入手するための労力や時間はネットを使うか使わないかで大きな違いがあるだろう。ネットに繋がっていれば、海外から見た日本の政局の批評を読むことも出来るのだから、リアルタイムで、いつでも、どこでも。
だから今、マスコミ側は『支持率』という『点』に絞って、現政権を貶めようとしているように思う。確か、前回の選挙では『マニュフェスト』(政権公約)が1つのキーワードになっていたのだが、今回はマニュフェストの"マ"すら出てこない。間が悪いのかどうか知らないですが。ネットには、検索エンジン goo! でマニュフェストを検索すると、次のようなものも目立つところに出てくる訳で。
- 教えて!goo 民主党の公約(マニュフェスト)について
忘れたい過去なのかな? しかしながらネットでは前回の参議院選挙で各党が掲げたマニュフェストを再確認し、現在の主張と比較することも出来るのだ。
なぜマニュフェストをとりあげたかというと、選挙期間中、現行の公職選挙法ではマニュフェスト(政策指針)を候補者のサイトでは掲載することができないのだ。この欠陥点をまず挙げておきたい。公職選挙法ではネットに関する規定は今もなく、ネットでの選挙活動(選挙期間中の宣伝と思われる行為)は文書図画の掲示・頒布に抵触する可能性があるため"自粛"状態であり、事実上の"禁止"である(*3)。
ネットに繋がる者と繋がらざる者、つまり、情報を持つ者と持たざる者による情報格差社会が今の日本では成り立ってしまっている。そこが本当の『格差社会』ではなかろうか。密かに政治家やマスコミ達は『情報格差社会』を歓迎しているように思えなくともない。マスコミはこれまで通り、ネットも自分たちの思いのままに操ることが出来ると信じていのではないかと穿った見方をしたくもなってくる。しかし、ネットがあれば、私たちは様々な情報を自ら取捨選択し、自らの頭で考え、ある時は時や場所を越えて討議する事もできるのだから。
正直、ホワイトカラー・エグゼクティブに関するマスコミ(旧世代)の世論誘導は巧くいったのではないかと私は呆れかえっているのだが。経緯については Wikipedia(ウィキペディア) の記述が中立で参考になる。こちらは未読であれば是非読んで、論点は何だったのか押さえておかなくてはいけないだろう。
- ホワイトカラーエグゼンプション - Wikipedia
鍵となるのは、当初政府(厚生省)が提示していたのは管理職が対象だった。ところが、マスコミは経団連のホワイトカラーエグゼンプションに関する提言(2005年6月21日)から『その年収の多寡にかかわらず、ホワイトカラ-エグゼンプション制度を適用する』(*4)という箇所を引用し(年収について言及している部分は伝えずに)、『残業代ゼロ法案』という名前を一人歩きさせた。結果、ホワイトカラー全てに対してホワイトカラー・エグゼクティブが適用させるイメージを植え付けさせる事に成功した。
ホワイトカラー・エグゼクティブについては、衆議院の委員会で論議されただけであり(*5)、法制化に向けての法案提出・本格的な国会での答弁は一切なされていないのに関わらず、マスコミ曰く『残業代ゼロ法案』が、あたかもブルーカラーも含めた全労働者に対して残業代を支払わないかのように思いこませ、骨抜きにされているのが日本の今の国政ではないだろうか。その結果が、安部政権の支持率低下に繋がっているのかもしれない。
戦前の自由民権運動・大正デモクラシーにおいては、政府が検閲して世論を誘導したと言われるのだが、今のマスコミは自分たちの主張したいように『情報統制』を行いたいのではないか、そのためには『情報格差社会』が必要であると考えているのではないかと思うと恐ろしい。
私たちは、いま、まさに洗脳社会のまっただ中にある。この中で正気を保って人間らしく生きたいのであれば、一方的な情報のみをうのみにせず、ネットなどを使い、多角的に情報を個々人が取得し、それぞれ自らの頭で考えなくてはいけない。そして、行動に移さなくてはいけない。
もうすぐ参議院選挙がある、今年の7月22日投票の見通しだ。既に情報戦は始まっている。たぶん、マスコミは「支持率低下」「無党派層の増加」「投票率は年々低下」などをキーワードに工作を始めてくるはずだ。前回の選挙の時も「どうせ投票しても無駄でしょ?」といった風潮をマスコミが流布していたように私は感じている。今必要なのは、自分で考えて行動すること。自分で考えて投票すること。この書き込みもそうだが、目の前の情報をそのまま受け入れるのではなく、必ず吟味した上で行動を起こさなくてはいけない。
でなければ、私たちは単なる情報奴隷だ。情報奴隷にならないようにするためには『情報格差社会』を是正しなくてはいけない。政治なんて興味ないと普段思っている方もいるかもしれないが、自分たちの生活に直結することが政治(まつりごと)であり、政治に興味無い事がカッコイイなんて思っているなら、それこそ奴隷そのものの姿ではないのだろうか。政治について語る・話し合う事は格好良くないかもしれないが、格好悪くもない。そういう次元の話ではないのだから。だから、もし何か自分の思うところがあればネットを使って自由に情報を発信していけばいいと思う。検索エンジンが拾ってくれれば、誰か目にとまる事もあるだろう。ネット上のコミュニティで論議をしてもいいだろう(論議と個人に対する誹謗中傷を混同しないよう注意が必要だが)。とにかく、行動が情報格差社会を是正していく、そして、社会を変えていく。そう私は確信している。
とりあえず、テレビのニュースは民放しか見ていないのであれば、たまに NHK を見て比較してみると良いと思う。選挙権がある有権者なら、必ず投票するように。望ましい候補者や政党が無くとも、その中で"まだマシだな"と思う方を投票すること。有権者なのに投票に行かず選挙や国政について語るべからず。未成年で選挙権がなければ、まずは本を読んだり人の意見に耳を傾けたり、見聞を広める事をお勧めする。
兎にも角にも、行動を起こさなければ何も変わらないのだから。
参考文献:
*1 首相官邸,
http://www.kantei.go.jp
*2 マスコミ最大のタブー『電通の正体』 永田町との深い関係 小泉首相にワン・フレーズ・ポリティックスをアドバイス, http://www.asyura2.com/0505/senkyo11/msg/454.html
*3 公職選挙法 第142条(文書図画の頒布)・第142条の2(パンフレット又は書籍の頒布)・第143条(文書図画の掲示)
*4 ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言, (社)日本経済団体連合会, 2005年6月21日, http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2005/042/teigen.pdf pp 12-14
*5 http://www.shugiin.go.jp/itdb_search.nsf/ITfoSearch2?OpenForm&Seq=1
* メディア別内閣支持率調査結果から見えるもの(1), 青山貞一, http://blog.livedoor.jp/aoyama211111/archives/50672472.html
* 選挙活動における議員のインターネット利用の有効性と問題点-ホームページを中心に-, 梶野 智子,http://www.slis.keio.ac.jp/~ueda/sotsuron98/kajino98.html